手形貸付は、会社が銀行あてに約束手形を振り出して差し入れ、それと引き換えにお金を借りる融資です。手形には借りる金額と返す期日を書き、期日が来たら手形の額を返します。
返す期間は1年以内が多く、仕入れの代金を先に払う時や、賞与や納税の月のつなぎに使われます。銀行と最初に「銀行取引約定書」を交わしておけば、借りるたびに長い契約書を作らずに済むのが特徴です。
要点
- 約束手形を銀行に差し入れて借りる、1年以内の短期の融資です
- 期日に返せない時は、新しい手形に書き換えて借り続けることがあります
- 紙の手形の交換は2027年3月末で終わるため、銀行ごとに借り方が変わり始めています
手形貸付の仕組み
たとえば3,000万円を6か月借りる場合、会社は額面3,000万円、期日を6か月後とした約束手形を銀行に渡します。銀行は利息を先に差し引いて口座に入金することが多く、6か月後の期日に会社が3,000万円を返すと、手形が戻ってきます。
利息を借りた時に先に払う形を「前取り」と呼びます。証書貸付では毎月の返済に利息が含まれるので、利息を払う時期が違います。決算書では、6か月分の利息のうち決算日より後の期間に当たる部分を前払費用として扱うことがあります。
期日に返せない時の書き換え
手形貸付は、期日に全額を返すのが前提です。ただ実際には、期日に新しい手形を差し入れて同じ額を借り直す「書き換え」がよく行われます。業績に問題がなく、銀行が続けて貸してよいと判断すれば、短期の融資を何度も更新して長く使うことになります。

書き換えは自動ではありません。期日の前に銀行が試算表や資金繰りを見直し、借り直しを認めないこともあります。書き換えのたびに利息の前取りと手形の印紙代がかかる点も知っておく必要があります。返済を続けながら同じ額を借り直す形は折り返し融資とは?で説明しています。
証書貸付・当座貸越との違い
| 手形貸付 | 証書貸付 | 当座貸越 |
|---|
借りる時に交わすもの | 約束手形 | 金銭消費貸借契約書 | 最初に枠の契約を1回 |
返す期間 | 1年以内が多い | 1年を超えることが多い | 枠の期間は1年か2年が多い |
返し方 | 期日にまとめて | 毎月決まった額 | 入金があった時などに自由に |
数年かけて返す設備資金は証書貸付、季節ごとのつなぎは手形貸付や当座貸越、という使い分けが一般的です。証書貸付の仕組みは証書貸付とは?、当座貸越は当座貸越とは?で説明しています。
手形に貼る印紙税
手形貸付で差し入れる約束手形は、印紙税の第3号文書に当たり、額面に応じた収入印紙を貼ります。
手形の額面 | 印紙税 |
|---|
10万円未満 | 非課税 |
10万円以上100万円以下 | 200円 |
500万円を超え1千万円以下 | 2千円 |
2千万円を超え3千万円以下 | 6千円 |
3千万円を超え5千万円以下 | 1万円 |
3,000万円の手形なら6千円です。書き換えのたびに新しい手形を作るので、そのたびに印紙代がかかります。ほかの区分は国税庁の印紙税額の一覧表で確かめられます。
紙の手形の廃止で手形貸付はどうなるか
全国銀行協会は、電子交換所での手形・小切手の交換を2027年3月31日で終えると公表しています。取引先への支払いに使う約束手形は、多くの銀行がすでに新しい振り出しの受付を締め切っています。
手形貸付で銀行に差し入れる手形は、取引先に渡して交換に回すものとは使い方が違います。ただ紙の手形をやめる流れの中で、手形貸付を証書貸付や当座貸越、電子記録債権を使った貸付に切り替える銀行が出ています。手形貸付で借りている会社は、次の書き換えの時に、今後の借り方を担当者に確かめておくと安心です。取引先への支払いの手形の話は約束手形の廃止はいつ?で説明しています。
手形貸付の利息の計算
手形貸付の利息は、借りる日数で計算します。3,000万円を年2.0%で182日借りるなら、3,000万円×2.0%×182÷365で約30万円です。前取りの場合、この30万円が先に差し引かれ、口座には約2,970万円が入ります。期日に返すのは手形の額面の3,000万円です。
書き換えで借り続けると、そのたびに次の期間の利息が前取りされます。年に2回書き換えれば、利息の前取りが2回と、手形の印紙代が2回かかります。同じ額を1年以上借り続けているなら、証書貸付や当座貸越のほうが手間と費用が少ないこともあるので、借り方を見直すきっかけになります。
銀行との付き合い方を詳しく知りたい方へ
当社が運営する「Bank Design|銀行戦略メディア」のnoteでは、短期の借り方の選び方や、複数の銀行との付き合い方を、経営者向けに書いています。銀行とのやり取りを詳しく知りたい方は、Bank Designのnoteもご覧ください。
融資のご相談
当社は、資金繰り表づくりと、短期と長期の借り方の組み立て、金融機関との面談の準備を支援しています。手形貸付からの切り替えを考える段階からご相談いただけます。サービスの内容は融資支援のページで紹介しています。
手形貸付の条件や切り替えの扱いは金融機関によって異なります。この記事は一般的な仕組みの説明で、特定の会社が融資を受けられることを示すものではありません。