100億宣言の壁
年商10億円と50億円で成長が止まりやすい理由

年商10億円の手前で止まる会社と、50億円を超えてから止まる会社では、止まる理由が違います。2025年版中小企業白書は、売上高の規模ごとに企業が独力では難しいと感じる課題と、スケールアップ(売上規模が上の区分へ移ること)した企業の取り組みを分析しています。10億円の手前では経営者一人で経営することの限界が、50億円を超えると経営理念の共有と大きな投資の判断が、成長の壁になりやすいと読み取れます。

この記事の要点

  • 2013年度に売上高10〜20億円だった企業のうち、2022年度に20億円以上になったのは29.3%で、約3社に1社です
  • 10億円未満では、経営計画と資金繰りが独力では難しい課題に挙がり、兼務の解消と権限の委譲が必要とされています
  • 50億円以上では、GX(脱炭素への対応)とM&Aが課題に挙がり、経営理念やビジョンの共有がスケールアップと関係しています

100億宣言の制度の概要と、宣言すると申し込める補助金は「100億宣言とは?」で取り上げています。

売上が上の段階へ進む会社は約3社に1社

白書は、2013年度と2022年度の売上高を比べ、企業がどの規模の区分へ移ったかを集計しています。2013年度に売上高10〜20億円だった企業のうち、2022年度に20億円以上になった企業は29.3%でした。残りの約7割は、同じ区分にとどまったか、売上を減らしています。白書の売上の区分は「10億円未満」「10億円以上50億円未満」「50億円以上100億円未満」「100億円以上」の4つで、区分ごとに課題の傾向が分かれています。

売上高10億円未満、10億円以上50億円未満、50億円以上の段階ごとに成長の壁になりやすい課題を示した図

年商10億円の手前で止まりやすい理由

年商10億円の手前では、社長一人で経営する限界、経営計画と資金繰りを独力で進める難しさ、業績と資金を確かめる管理の差で止まりやすくなります。

経営者一人で経営することの限界

売上高10億円未満の企業では、成長のために必要な取り組みとして「経営者の兼務解消・権限委譲」を挙げた割合が最も高くなっています。白書は、売上高10億円の成長の壁を「経営者一人で経営することの限界」と書いています。営業、現場、採用、資金繰りを社長がすべて担当していると、売上が増えるほど社長の時間が足りなくなります。

経営計画と資金繰りを独力で進めるのが難しい

独力では難しい課題として「経営計画策定」と「資金繰り」を挙げた割合は、10億円未満の企業で高くなっています。経営計画を作っている企業の割合も、10億円以上では6割を超えるのに対し、10億円未満では5割を下回ります。経営人材がいないと答えた割合も10億円未満が最も高く、計画を立てて数字を管理する人が社内にいない会社が多いことが分かります。

業績とキャッシュフローを確認できる管理の差

業績やキャッシュフローを適時・適切に確認できる管理に取り組む企業は、取り組まない企業よりもスケールアップした割合が高く、その差は10億円未満と10〜50億円未満の区分で最も大きくなっています。取締役会の設置と社外取締役の登用も、10億円未満と10〜50億円未満のあいだで取り組みの割合の差が最も大きい項目です。財務の責任者を置く理由と時期は「CFOが必要になる会社とは?」で取り上げています。

年商50億円を超えてから止まりやすい理由

年商50億円を超えると、経営理念とビジョンの共有、GXとM&Aの判断、決算情報の開示に取り組むかどうかで、成長の差が開きやすくなります。

経営理念とビジョンの共有

経営理念やビジョンを社内で共有する取り組みは、取り組む企業と取り組まない企業のスケールアップの割合の差が、50億〜100億円未満の区分で最も大きくなっています。従業員と拠点が増え、社長が全員と直接話せなくなる規模では、会社が何を目指すかを言葉にして伝えることが、組織を動かす前提になります。

GXとM&Aの判断

独力では難しい課題として、50億円以上の企業ではGXとM&Aの割合が高くなっています。どちらも投資の金額が大きく、社内の経験だけでは判断が難しいテーマです。白書は、意思決定のプロセスを明確にしている企業ほどスケールアップの割合が高いことも示しています。

決算情報の社外への開示

決算情報を社外に開示している企業は、開示していない企業よりもスケールアップの割合が高く、白書は開示が借入れによる資金調達につながる可能性があると書いています。売上高100億円以上の企業でも約2割は開示に取り組んでいません。金融機関に決算と月次の数字を報告する考え方は「月次の数字を見ていない会社が、銀行で困ること」で取り上げています。

どの段階でも、数字を確認して判断する人が要る

10億円の手前でも50億円を超えてからも、白書のデータで共通しているのは、社長だけが判断する状態を変えることです。10億円の手前では財務と管理を任せられる人を置き、50億円を超えてからは理念と意思決定の手順を組織に共有します。100億宣言は、売上高100億円を目指す道筋を宣言書に書いて公表する制度で、宣言書を作る過程で自社がどの段階の課題を抱えているかを確かめることにもなります。

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