地元企業の100億宣言を支援するために自治体ができることは、対象になる企業を見つけること、宣言書を作る段階を支えること、宣言した企業を国の補助金や経営者のネットワークへつなぐことの3つです。100億宣言は中小企業基盤整備機構(以下、中小機構)が受け付ける国の制度ですが、地域のどの企業が対象になり、どの企業が成長の途中で止まっているかを知っているのは、地域の産業を担当する自治体と支援機関です。
この記事の要点
- 宣言できるのは売上高10億円以上100億円未満の企業で、宣言書の作成には10年以内の成長の計画が必要です
- 静岡県と山形県は、企業の発掘、宣言に向けた戦略づくり、宣言後の補助と経営者の集まりを、県の事業として予算を付けて進めています
- 中小企業白書では、売上高10億円未満の企業ほど経営計画と資金繰りを独力で進めるのが難しいと答えています
100億宣言の仕組みと、自治体が関われる部分
100億宣言は、売上高100億円を目指す中小企業が、目標と達成までの道筋を宣言書に書き、100億企業成長ポータルで公表する制度です。宣言した企業は、中小企業成長加速化補助金への申し込み、日本政策金融公庫の100億宣言関連の融資の制度、経営者のネットワーク、中小機構の伴走支援などを利用できます。制度の概要は「100億宣言とは?」、宣言する企業から見たメリットと注意点は「100億宣言のメリットとデメリット」で取り上げています。
国の支援は、宣言した企業が自分で申し込む形が中心です。宣言の前の段階、つまり対象になる企業に制度を知らせ、宣言書を作成できる体制を整えるところは、国の窓口だけでは対応しにくい部分です。

自治体が担える3つの役割
自治体が担えるのは、対象になる企業を見つけること、宣言書を作る段階を支えること、宣言後に国の支援と地域の交流会へつなぐことの3つです。
1. 対象になる企業を見つける
FAQによると、宣言できるのは売上高10億円以上100億円未満の企業です。自治体は、補助金や制度融資の申し込み、企業訪問、商工団体との連携を通じて、地域のどの企業がこの規模にあるかを把握できます。山形県は令和8年度の資料で、やまがた産業支援機構に専門の人材を置き、企業の発掘から宣言に向けた事業戦略の策定、宣言後の支援までを行う事業に17,418千円を計上しています。
対象の企業を見つける時は、売上高の規模だけでなく、設備投資や出店の計画を持っているかも手がかりになります。地域の金融機関や商工会議所は、取引先の投資の相談を受けているため、自治体が連携先として声をかけると、宣言の候補になる企業の情報が集まりやすくなります。
2. 宣言書を作る段階を支える
宣言書には、売上高の目標、達成までの期間(10年以内が目安)、そのための投資や人材の方針を書きます。申請には直近3期分の決算書も必要です。2025年版中小企業白書では、売上高10億円未満の企業で「経営計画策定」と「資金繰り」を独力では難しい課題に挙げる割合が高く、経営計画を作っている企業の割合も10億円以上の企業より低くなっています。宣言の対象に近い企業ほど、10年の計画を数字で書く作業に支援が要ると考えられます。FAQによると、宣言書に書いた内容はすべて公表され、一部だけを非公開にはできません。取引先や競合に計画を知られることをためらう経営者もいるため、何が公表されるかを事前に説明することも、自治体の窓口が担える支援です。売上規模ごとの課題の違いは「100億宣言の壁」で取り上げています。
3. 宣言後に国の支援と地域の交流会へつなぐ
静岡県は、静岡100億企業創出促進協議会を設け、経営者のネットワークとして静岡Growth100ネットワークを運営し、県の中小企業等収益力向上事業費補助金に成長加速化枠を設けています。山形県も、100億宣言企業の売上拡大への補助(44,000千円)と、シンポジウムと経営者の勉強会(2,918千円)を令和8年度の事業にしています。九州経済産業局は、九州の100億宣言企業向けに経営者のネットワークや座談会を開いています。県の補助と国の補助金、国の経営者のネットワークと地域の交流会を組み合わせると、宣言した企業が次の投資に進む時の選択肢が増えます。
宣言した企業が次に抱える課題
宣言した後、企業は宣言書の目標に向けて設備投資や採用を進めます。投資を借入でまかなう場合は、金融機関に出す事業計画と資金繰りの計画を作る必要があり、ここで財務の担当者がいないことが課題になる企業もあります。白書では、売上高10億円未満の企業で経営人材がいないと答えた割合が最も高くなっています。自治体の支援を、宣言書を出すまでで終わらせず、宣言後の資金計画と財務の体制づくりまで続けると、宣言が投資と成長につながりやすくなります。財務の責任者を置く理由は「CFOが必要になる会社とは?」をご覧ください。
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